今は元気に暮らしている親も、歳を重ねれば介護が必要になるかもしれません。親の介護は、多くの人が直面すると言っていいでしょう。今すぐに介護が必要な状態ではなくても、将来に備えて心づもりをしておくことをおすすめします。
母の介護(在宅介護・施設介護合わせて約11年)と看取りまで経験した私が、親が元気なうちにやっておけば良かったと思うことをお伝えします。
親の介護が始まる前に準備しておきたいこと
親が元気なうちに、できる限りやっておきたいことは次の5つです。
その1:元気なうちに親の要望を聞いておく
まず初めにしておきたいのは「介護や老後に関する親の希望を聞くこと」です。
介護が始まると、親に代わって決めなければならない場面が出てきます。加齢とともに判断能力が衰えてきたり、認知症になったりすると、親の望んでいることを聞くのが難しくなります。
親の希望にそぐわない判断をしてしまわないように、「老後はどんな生活をしたいか」「どんな介護をしてほしいか」など親の希望を聞いてみます。その際、親の不安をあおったり、プライドを傷つけたりしないように十分に気をつけましょう。親戚や自分の上司・同僚の話など、世間話の延長で話題にしてみるのもおすすめです。
特に遠距離の場合は、顔を合わせて聞ける機会が少なくなります。電話やLINE、zoomなどのwebツールを利用したり、帰省の回数をできるだけ増やしたりなどして、これまで以上にコミュニケーションを密に取るように心がけましょう。
その2:親の健康状態や生活習慣を把握しておく
高齢になると体調や心身の状態に少なからず変化が表れます。親の健康状態や心身状態、生活習慣なども把握しておきましょう。
例えば、ふらつきやすい、疲れやすくなった、階段の昇り降りを嫌がるなど、ちょっと気になる体調のことや、物忘れが激しくなった、怒りっぽくなった、落ち込みやすくなった、など。その状態や頻度をメモしておくと、介護の予兆にいち早く気づくことができます。
健康に関して確認しておきたいこと
- 主治医(かかりつけの医師)はいるか
- 現在服用している薬の種類(何の症状に対する薬か)、薬の名前、回数と数(量)
- 副作用が出たことのある薬の種類、名前、副作用の症状
- 保険証や診察券、お薬手帳の保管場所
- アレルギーの有無
- これまでにかかったことのある大きな病気やケガ
- 家族に短命の人、がんで亡くなった人、脳卒中や心臓病などで倒れた人がいるか
生活習慣について確認しておきたいこと
- 食事の量、回数、好きな食べ物など
- 日常の起床・就寝時間
- 飲酒、喫煙習慣(好きなお酒と酒量、タバコの種類や本数について)
- 暮らしの中で楽しみにしていることや好きなこと、趣味
- 外出の頻度、行き先、一緒に行く人など
- 散歩、体操など続けている運動
- 続けている仕事、地域の役割など楽しみややりがい
こうした情報は、いずれ介護保険サービスを利用する際の参考にもなります。
その3:親の交友関係を把握しておく
近所とのつきあいや交流のある友人、参加している集まり、親戚づきあいなど、親の人間関係を聞いておきましょう。民生委員や自治会の人の連絡先も確認しておくと安心です。こうした人たちとの関わりは、親と別居の場合、特に重要になります。
ときどき様子を見に行ってもらうなど、お願いできることはしてみましょう。遠距離の場合は、帰省した際に親と一緒に挨拶に行き、自分の連絡先を伝えておくといいでしょう。
その4:親の経済状況を確認しておく
介護には少なからずお金がかかります。全部でいくらかかるかは終わってみないと分かりません。しかし、介護にかけられるお金の見通しを立てておければ少しは安心です。
お金の話を切り出すのはなかなか難しいですが、どれくらいの資産を持っているのかを、親が元気なうちに確認しておくのは、介護の事前準備において重要です。「介護に割けるお金はどのくらいあるのか?」がわかると、長期的な介護プランにも対応しやすくなります。
お金の話はとてもナイーブな話題なので、介護に関する親の希望などを聞いた後に切りだしてみるのがよいでしょう。
確認しておきたいこと
- 年金の受け取り額(年金手帳、年金定期便、年金振込通知書などで確認)
- 預貯金額(口座がある郵便局や銀行などのすべて)
- 保有している不動産
- 株式、投資信託などの金融証券
- 通帳やキャッシュカード・保険証・実印・住基カードやマイナンバーカード、保険証書、不動産の権利書などの保管場所
- その他所有している資産(車・宝石・貸付金など)
- 加入している保険(保険証券や支払い状況、印鑑を確認)
- ローン・借入の有無と金額、返済計画(契約書や借用証明書、場合によっては完済証明書)
その5:介護負担についてきょうだいで話し合っておく
親の介護費用は親のお金で賄うのが基本ですが、介護が長引いた場合など、お金が足りなくなることも考えられます。親の希望を踏まえて「どんな介護ができるのか?」「お金はどのくらい必要で、どう捻出するのか?」などを考える必要があります。
兄弟姉妹がいる場合は、親とだけでなくきょうだいともあらかじめ親の介護について、どのくらいの経済的負担が可能か、どのように役割分担をするか、などを相談しておくことが大切です。
まとめ
振り返ってみると、「元気なうちに親の希望を聞いておいたら、こんなに悩まないのかな」「これで良かったのかな」「母は満足してくれてるのかな」と思うことばかりでした。
親の様子が少し心配だと思い始めたら、まずは親とこれまで以上にコミュニケーションをとってみてください。聞きにくいことも多いかもしれませんが、できることから少しずつ進めてみましょう。