介護離職しないほうがいい一番の理由|お金ではなく最も重要なこととは

介護

現在仕事をしながら親の介護をしているという人も少なくないと思います。仕事と介護の両立は簡単なことではありません。私自身、かつて介護離職を考えたことがありました。でも思いとどまって介護を続けてきました。

一般的には「介護離職はしないほうがいい」と言われていて、その最たる理由は金銭的なものでしょう。でも私は、それだけが理由ではないと強く思っています。今回はその理由についてご紹介します。

仕事と介護の両立に悩む

仕事を持つ介護者の大変さは同居か別居かによっても違いますが、仕事と介護の両立に悩む人は少なくありません。

  • 夜中に暴れたり落ち着かなくなったりして目を離せないので睡眠不足になる
  • 遠方に住んでいるので、介護のために週末は実家に帰らなくてはならず、心身ともに休めない
  • 介護サービスを利用しているが、何か問題が起きて仕事中に呼び出される

普通に仕事するだけでもいろいろ大変なのに、そこに親の介護が加わって、身も心もボロボロになります。そこで考えるのが、「介護離職すれば負担が減るのではないか」「介護に専念するために仕事を辞めたい」いわゆる「介護離職」です。

介護離職しても負担は軽くならない

介護離職することで介護に専念できるようになり、これまで感じていた精神的・身体的な負担が軽くなる場合もあるでしょう。また、自分が介護することで外部の介護サービスを利用しなくて済むので介護費用を低く抑えられるというメリットもあるかもしれません。

しかし、「身体的・精神的な負担を減らすために介護離職をしたはずなのに、現実は違っていた」と悩む介護者も少なくありません。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング(厚生労働省委託調査)「令和3(2021)年度仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」によると、「介護離職後に負担が増した」と回答している人は「精神面」「肉体面」「経済面」いずれも6割を超えています。

介護離職すれば負担が減るはずと思っていたのに、実際には、「介護離職」がむしろ逆効果になってしまっている様子がうかがえます。

介護離職しても必ずしも負担が軽くなるわけではない可能性がある点には留意しましょう。また、介護によるストレスが大きくなると、介護放棄や虐待などにも繋がりかねません。

介護離職しないほうがいい理由

介護離職しないほうがいい理由はいくつかあります。

収入が減る

安定した収入源を失う

仕事を辞めると、当然のことながら安定した収入が得られなくなります。

離職した場合、不動産収入などがない限り、それまでの貯蓄や親の年金に頼ることになります。離職したばかりの頃はそれで賄えたとしても、収入がなければお金は減る一方なので、介護が長期間に及ぶほど、将来的に生活に困る可能性があります。

収入がなくなれば貯蓄もできなくなり、自分自身の老後資金の備えが不十分になってしまうことも考えられます。介護離職をして介護を受ける親の介護費用が減ったとしても、介護者の経済的負担が増えるのでは意味がありません。

将来もらえる年金も減る

要注意なのは、介護中の収入減少だけではありません。現役世代の収入が減ると、原則65歳以降から受け取れる公的年金の額も減ってしまうのです。短期的にも長期的にも経済的なデメリットは非常に大きいといえます。

介護離職によって、生涯で受け取れる収入が大きく減ってしまうという事実をきちんと理解しておきましょう。

再就職が厳しくなる

再就職が難しいことも介護離職しないほうがいい理由のひとつに挙げられます。

介護は何年続くか分かりません。一定のキャリアや経験があったとしても、ブランクが長くなればなるほど再就職のときにマイナスの評価となりがちです。若い人と比べると再就職先を見つけるのは難しくなります。自分が希望する職種に再就職できるとは限らないのが現状です。

再就職できたとしても、収入は前の職場よりも大幅に下がったり、退職金がもらえなかったりといった可能性もあります。正社員ではなく契約社員やパートとして働く場合、社会保険に加入できないケースもあり得えます。

給料が減少すると、その分老後にもらえる年金の額も減ります。「自分自身の老後資金」は明らかに減少してしまうのです。

介護の負担が減らない

介護離職を選ぶ人の多くは「仕事と介護の両立が大変だから介護に専念したい」と考えます。しかし、先ほどご紹介したように、介護離職をしても介護の負担が減らずに逆に負担が増えてしまう可能性もあります。

収入がなくなると支出を減らすことを考えるようになります。介護にはさまざまな費用がかかります。介護サービスの回数や種類を制限すれば費用は抑えられますが、自分の介護量が増えて肉体的に疲労してしまいます。

介護費用は想像以上にかかる場合が多いので、仮に退職時に多くの貯蓄があったとしても「このままのペースでお金が減っていって大丈夫なのか」と不安にかられることもあるでしょう。肉体的にも金銭的にも不安は常につきまとうことになります。

精神的ストレスが増える

介護離職しないほうがいいと思う一番の理由は、金銭面よりも精神面に関することです。

社会から孤立したように感じる

仕事をしていると会社の人など多くの人と関わりますが、介護離職すると関わりを持つ人が限られてしまいます。誰かと話したり遊びに行ったりといった気晴らしもできず、社会から孤立したような気持ちを感じやすくなります。

要介護者以外の人との関わりが減ると、徐々に精神的なストレスが蓄積されて、介護うつなどになる危険性もあります。介護そのものによる精神的な負担も大きいので、介護をする気力や体力がなくなってしまい、介護放棄や虐待につながる恐れもあります。

気分転換がしにくい

仕事をしていれば、仕事上の悩みやストレスも生じるでしょう。負担にはなりますが、仕事中は介護のことを少しだけ忘れられる時間でもあります。仕事をしていることで、介護のことだけを考えすぎずに過ごせます。

介護に専念できる状況は「気分を切り替えるタイミングがない」「介護のことしか考えられなくなる」というリスクもはらんでいるのです。

むしろ将来への不安が精神的なダメージにつながりやすい点は介護離職のデメリットです。介護は長期間化することも多く、先の見えない生活に不安を覚える人は少なくありません。

将来への不安がつのる

お金がいつまで持つのか、介護を終えた後の自分の生活がどうなるのかなど、将来に対する漠然とした不安が精神的に大きな負担になってしまうこともあります。

仕事を辞めて社会的なつながりが薄くなると、特にこうした不安を抱えやすくなります。

介護から離れる時間をつくることが大切

介護がすべて、とにかく毎日が介護だけの生活になると自分を追い詰めてしまい、些細なことでもイライラしがちになります。

介護から離れる時間を持つことは、介護を続けていくために欠かせません。自分のためだけに使う時間をつくったり、外に出て気分転換をしたりしましょう。

「もう介護離職するしかない」と考えている状況の人もいるかもしれません。でも、介護はいつまで続くかわかりません。また、介護が終わったあとも自分自身の人生は続きます。

人によって状況はさまざまなので、「絶対に」とは言えません。でも、私自身の経験から、今まさに介護離職を考えている人に伝えたいのは「できれば仕事は辞めないでほしい」ということです。

仕事を続けることで介護から離れて過ごす時間や少しの余裕を持てるかもしれません。少なくとも私はそうでした。介護離職を考えたとき、思い切って会社に伝えたからこそ介護を続けてこられたと思っています。

まとめ:親の介護が終わった後も自分の人生は続く

仕事と介護の両立は簡単なことではありません。悩みや不安は尽きないかもしれません。「介護離職すれば少しは楽になるかもしれない」と考えるのは、ある意味当然のことです。

でも、親の介護が終わった後も自分の人生は続きます。できれば仕事は続けてほしいと思います。

めぐまね
めぐまね

どうすれば仕事と介護を両立できるか、介護離職をする前に必ず誰かに相談してみてください。介護サービスや休業制度の利用も検討してみましょう。

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