遺骨を埋葬する場所としてはお墓(墓石タイプ)が一般的ですが、最近は納骨堂を利用するという方も増えてきています。納骨堂には具体的にどういったメリットとデメリットがあるのか、一般点なお墓と比較しながら見ていきましょう。
一般的なお墓との決定的な違い
そもそも納骨堂とは、どういうものなのでしょうか。
納骨堂は、遺骨を主に建物内に安置し供養する施設をいいます(屋外にある施設もあります)。
もともとは、お墓を建てるまでお寺の境内で一時的にご遺骨を預かる建物を指していましたが、最近では、お墓の代わりに利用する施設として認知されるようになりました。利便性が高く、宗旨や宗派に関わらず納骨できる施設も多いため、近年注目を集めています。
お墓との最も大きな違いは、お墓が外にあるのに対し、納骨堂は屋内にあるのが一般的だという点です。
建物内にあるがゆえに掃除などの手間が少ないのがメリットですが、その建物が老朽化した場合のコストや管理体制に気を配らなければならない点がデメリットのひとつといえるでしょう。
納骨堂のメリット
それでは、具体的なメリットについて、ひとつずつ確認していきましょう。
一般のお墓よりも費用をおさえられる
一般的なお墓を建てる場合、墓地費用と墓石費用をあわせて約200万~300万円(平均相場)がかかります。
一方の納骨堂は、場所や納骨方法により異なりますが、平均的な相場は50万~100万円程度ですので、一般的なお墓を建てるよりも費用をおさえられます。
ただし、これはあくまで大まかな金額であり、ご遺骨の数や利用年数などにより施設によってまちまちです。実際に選ぶ際には、資料請求や見学時などにきちんと確認しましょう。
交通の便が良い
「駅から近い」「公共交通機関で行きやすい」などアクセスの良い納骨堂が多く、電車や徒歩でお参りに行けます。車がない、あるいは、将来もし車の免許を返納しても、バスやタクシーを利用して気軽にお参りができます。
季節や天候を気にせずお墓参りができる
一般的なお墓は屋外にあるため、天候によってはお墓参りが難しいこともあります。お盆は暑さが最も厳しい時期です。雪国では、冬のお参りを避ける人も多いでしょう。
しかし、納骨堂ではこのような心配がありません。屋内であるため、冷暖房が効いた環境で季節や天候に左右されずに快適に参拝することができます。
また、納骨堂の多くはエレベーターが完備され、バリアフリー化もされているため、お年寄りや車いすの方もお参りしやすいのが特徴です。
掃除の負担が少ない
一般のお墓は、ずっと雨風や日光にさらされており、足下から雑草が生えてきます。草むしりや墓石掃除などを自分で行う必要があります。
納骨堂は基本的に屋内施設なので、こうした負担はありません。お墓参りの際に掃除用具を持参することなく、手ぶらで参拝できます。
宗旨・宗派を問わない施設が多い
納骨堂を運営できるのは、寺院、自治体、宗教法人・財団法人・社団法人に限られています。
公営や民営の納骨堂では基本的に宗旨・宗派を問わずご遺骨を受け入れてくれます。
寺院が運営する場合であっても、一般的に宗旨・宗派は問われず、檀家になる義務や寄付は不要という納骨堂が増えてきています。基本的には運営元の宗派の作法で供養されますが、法要の際は任意の宗派で執り行えるところもあります。
永代供養してもらえる
一般的なお墓の場合、お墓を継ぐ人がいなくなると無縁墓(無縁仏)となってしまいます。無縁墓になると、誰にも手入れされず汚れたままという状態になりかねません。しかし、納骨堂の場合はその心配が不要です。
ほとんどの納骨堂は永代供養となっているため、万が一お墓を継ぐ人がいなくなっても、そのままご供養を続けてもらえます。
納骨堂では、契約期間が満了(お墓を継ぐ人がいなくなった)した後は、合祀(ごうし)されて永代供養(えいたいくよう)となるものが大半です。
合祀は「合わせて祀る(まつる)」という意味です。
「永代供養」や「合葬(がっそう:合わせて埋葬する)」とほぼ同じ意味の言葉として使われます。
個別の骨壺からお骨を取り出し、血縁関係のない人たちのご遺骨と一緒に埋葬することをいいます。不特定多数のご遺骨とひとまとめにされ混ざった状態になります。
後を継ぐ人がいなくても生前に契約(購入)できる納骨堂も多いです。永代供養付きの納骨堂なら、単身者でも自分で供養先を準備できます。
納骨堂のデメリット
納骨堂の最大の特徴は屋内でお参りができることですが、それゆえのデメリットもあります。
お墓参りをしている実感がわきにくい
「お墓参りとは墓石に手を合わせるもの」といったイメージを持っている人は、違和感を覚えてしまったり、お墓参りをしている感覚が得られにくかったりするかもしれません。
また、納骨堂はもともとはお墓を建てるまでの間、一時的にお寺の境内で遺骨を預かる場所だったため、いまだに「一時預かり」としてのイメージを持っている方も多いようです。そのため、家族や親族が反対するケースもあります。納骨堂を検討しているのであれば、あらかじめ家族などと話し合っておきましょう。
お供えができない
お花が枯れたりお供え物が傷んだりするので「お花や食べ物、お酒はお供えできない」などの制限が設けられている場合が多いです。フロアの一部分にお線香や食べ物、お酒を供える専用スペースを設けている納骨堂もあります。
また、屋内施設なので、火のついたお線香を供えることは基本的にできないことが多く、細かくした香を香炉に落として焚くタイプが一般的です。
一般的なお墓であれば当たり前のようにできるこのようなお供えをできないことに違和感やもの足りなさを感じる人もいるでしょう。
建物の老朽化により修繕費用がかかる
納骨堂は建物内に遺骨の収蔵スペースが設けられており、年数がたつにつれて老朽化していきます。
毎年支払う管理費に修繕費が含まれていれば問題ありませんが、建物の建て替えや修繕にあたり、納骨堂の利用者に費用負担を求められることもあります。
「納骨堂は一般的なお墓と比べて安いから」という理由で選ぶ人は、建物の修繕費についてきちんと確認しておきましょう。
大地震などの自然災害や老朽化に伴い、納骨堂自体が使えなくなる可能性もあります。修繕計画や災害対策がきちんと考えられている施設を選ぶことが大切です。
建物/施設の維持管理への不安
納骨堂は一般的に建物の中にあるため、建物が老朽化した場合、遺骨はどうなるのかという不安があります。
火事や地震など万が一のことが起きたとき遺骨を守るための具体的な対応策があるか、納骨堂が使用できなくなる可能性はないかなどを契約時に確認しておく必要があります。契約書に記載がない場合は、管理者に確認しましょう。
使用期限があり、最終的には合祀される
一般的なお墓であれば、跡継ぎが続く限り継続して利用できます。
一方、納骨堂は収蔵スペースの使用期限が決められている場合が多いです。三十三回忌や五十回忌などの法要の節目に合わせたり、30年や50年を区切りとしたりなど、施設が設けているプランの中から選択して契約することが一般的です。
納骨堂の使用期間が終了すると遺骨は合祀墓にうつされます。合祀墓はほかの人の遺骨と一緒に混じってしまうため、あとから骨を取り出したいと希望しても取り出せません。
納骨堂の中でも承継者がいる限り永代に渡って使用できるものもあります。契約の際には、使用期間についてきちんと確認しておきましょう。
預けられる遺骨の数に制限がある
一般的な墓は、骨壺を並べることも、遺骨を土に還すことも、その両方に対応できるように作られています。
しかし、納骨堂では基本的に、納骨壇の中に骨壷のままご遺骨を納めます。そのため、中に納められる遺骨の数に限りがあります。収納スペースの都合上、骨壺のまま納めることができなくなった場合、ご遺骨を布袋にうつしたり、1つの骨壺にまとめたり、合祀墓へ弔ったりする必要がでてきます。
納骨堂を選ぶときに注意したいこと
以上のメリットとデメリットを踏まえ、納骨堂を選ぶ際にはどんなことに注意すればいいのでしょうか。
お参りしやすい条件が揃っているか
周辺環境や施設内の設備(エレベーター・トイレ・休憩スペースなど)をチェックしましょう。
参拝できる曜日と時間が決まっています。お参りの手順や参拝スペースの環境が希望に合っているかも重要です。
ご遺骨の収蔵方法と期間が希望にあっているか
納骨堂は契約期間を過ぎると、合祀されてお骨を取り出すことはできなくなります。契約期間はいつまでか、延長ができるのかを事前に確認してください。
収納スペースに納められるご遺骨の数、使用できる期間、使用期間終了後のご遺骨の扱いなどが希望にあっているか、よく確認したうえで契約しましょう。
費用とシステムが見あっているか
費用相場を参考に、相場からかけ離れていないか、サービス内容や設備と費用が見あっているか、よく確認しましょう。
安すぎる場合も注意が必要です。「あとから追加で費用を請求された」ということがないよう、金額の内訳や、年間管理費なども必ず確認しましょう。
複数の納骨堂を見比べてみると判断がしやすくなります。
アクセス
納骨堂を選ぶときは、自宅からの距離や通いやすさも大切です。
高齢になったときでも通えるように、公共交通機関や送迎シャトルバスの有無、最寄り駅から徒歩でどれくらいかかるかなどアクセスの良さも確認しておきましょう。
まとめ
納骨堂は一般の墓よりも費用をおさえられ、天候に左右されずにお墓参りができるなどのメリットがあります。一方で、預けられる遺骨の数に制限があることや、最終的には合祀されるなどの留意点もあります。メリット・デメリットを踏まえ、納得いくまで比較検討しましょう。