納骨堂には、ロッカー式や仏壇式などがありますが、近年増えているのは自動搬送式です。
「自動搬送式の納骨堂って、いったいどういう仕組みなの?」「自動搬送のお墓って、なんとなく違和感あるなぁ」という方もいるかもしれません。
そこで、納骨堂の中でも、自動搬送式納骨堂とはいったいどういうものなのか、見学してわかったことも交えつつ、まとめてみました。
自動搬送式納骨堂が増えている理由
従来のお墓の場合、霊園を建設するにはかなり広い土地が必要です。一方、自動搬送式納骨堂は狭い土地でもより多くのお骨を納められます。そのため、土地が少ない東京などの都市部を中心に近年増えてきています。
また、納骨堂を設置提案するメーカーが、自動搬送式を寺院に強く進めるという背景もあるようです。どんなメーカーが自動搬送式納骨堂のシステムを手がけているのかについては、この記事の最後に紹介しています。
自動搬送式納骨堂の特徴
「自動搬送式納骨堂」とは専用のICカードを使い、機械式で遺骨を呼び出せるシステムの納骨堂のことです。「機械式納骨堂」や「マンション型納骨堂」「ビル型納骨堂」などとも呼ばれています。
自動搬送式納骨堂は「納骨場所」と「参拝場所」が区別されていて、参拝するときに参拝場所に遺骨が自動的に搬送されてくるシステムです。
実際のしくみは異なりますが、立体駐車場(自動車のタワーパーキング)で、車が搬送されてくるをイメージすると分かりやすいでしょう。施設によっては、数千基の遺骨を安置することが可能なところもあります。
自動搬送式納骨堂の仕組み
自動搬送式では、ご遺骨は骨壺や骨袋に入れて厨子に納められ、納骨堂のバックヤードにある高層の収納棚に保管されていることが一般的です。
自動搬送式納骨堂は、高層の収納棚・厨子(ずし)を搬送するスタッカークレーン・参拝ブース・管理システムで構成されています。
厨子とは、仏像や経典・位牌など、大切なものを納める箱のこと。
納骨堂では、遺骨の入った骨壷を納めるための入れ物として厨子が使用されています。
参拝者が専用のICカードをかざすと、機械制御されたスタッカークレーンが稼働し、厨子を参拝ブース(共用の祭壇)に搬送します。参拝が終わると、厨子はまたスタッカークレーンによって元の位置に戻されます。
この仕組みは工場や物流センターなどで使われているピッキングのシステムをもとに開発されています。ピッキングとは、指示に従い商品や部品などを保管されたところから取り出し、定められたところに移動することをいいます。
自動搬送式納骨堂にかかる費用
自動搬送式納骨堂を使用するには、永代使用料や管理料を支払う必要があります。
永代使用料
自動搬送式納骨堂の永代使用料の相場は、立地条件や施設の設備・規模などによって変わりますが、20万円~150万円ほどです。施設やタイプによってかなりのバラつきがあるので注意しましょう。
管理費
管理費は、設備のメンテナンスや施設の維持管理の費用に充てられます。そのため、毎年定期的に支払わなくてはいけません。相場は、年間1万円から2万円程度です。他の納骨堂と違い、少し高めに設定されているのも特徴です。
自動搬送式納骨堂のメリット
搬送式納骨堂は比較的新しい納骨堂のスタイルであるため、設備が充実しており、バリアフリーなどでお参りに配慮した施設が多いです。
ここでは、納骨堂の中でも特に自動搬送式のメリットとデメリットについて紹介しています。納骨堂全般のメリット・デメリットについてはこちらの記事にまとめています。
参拝のための設備が充実している
ロッカー式や仏壇式、位牌式など他のタイプの納骨堂では、他の利用者の収蔵スペースとの距離が近いため、参拝スペースが狭く窮屈に感じられます。
自動搬送式納骨堂は参拝ブースがきちんと設けられているため、従来のお墓参りのようにゆったりと落ち着いて手を合わせることができます。個別に参拝できるように参拝ブースが仕切られていたり、故人の写真や名前がパネルに表示されたりする施設も多いです。
セキュリティ面で安心
暗証番号や専用のICカードで認証してはじめて遺骨が搬送される仕組みなので、まったく関係のない人がふらっときてお参りすることはできません。
自動搬送式納骨堂のデメリット
もっとも大きなデメリットは、機械によって稼働しているという点です。将来的に搬送システムを維持更新していくために、管理費が上昇する可能性や、利用者にその維持費用を求められる可能性も否定できません。
建物の老朽化による弊害が起こりうる
一般のお墓の場合、墓地そのものがなくなってしまうということは基本的にありません。しかし、自動搬送式納骨堂は、将来的に建物の老朽化の問題が発生します。
建物が老朽化し改修工事や大規模な修繕工事が必要となったとき、新たに追加で費用を請求される可能性もあります。
機械のメンテナンスや管理のための管理費が必要ですし、故障した場合にはお参りができないということもあります。実際、私が見学した際に電気トラブルで搬送システムが作動せず、参拝の様子を見学できなかったことが一度ありました。
地震や火災など災害によって建物やシステムが壊れたり、最悪の場合、遺骨が焼失や破損する可能性も考えられます。
管理費が高め
自動搬送式納骨堂で最新式の機械を導入している場合には、建物の管理や遺骨管理のための機械のメンテナンスとして、管理費用が高額になる場合もあります。
設備やサービスが充実しているため、他の納骨堂と比べて年間の管理費が高くなりがちといえます。
早朝や深夜にはお参りできない
自動搬送式納骨堂は建物内にあるため、開館時間内でなければお参りができません。
従来のお墓の場合、早朝や深夜でもお参りできますが、自動搬送式納骨堂は日中に行く必要があります。
営業時間は平日週末を問わず9時~19時ごろまでのところが多いです。ちなみに、私が見学に行ったところは、どこも年末年始も開館しているとのことでした。
そのほか、設備のメンテナンスのために、年に数回の休館日を設けている施設が多いですが、夜中にメンテナンスを行うので休館日なしというところも、まれにあります。
デメリットと言われているが、実際には違う点
お墓のポータルサイトなどでは「時期によっては混雑する」「ICカードがないとお参りできない」と書かれていることが多いのですが、実際に見学して実態は違うと思ったことを2点紹介します。
時期によっては混雑する?
インターネットでは「お彼岸やお盆等などのお墓参りのシーズンは混雑する」と書かれていることが多いです。しかし、実際に見学に行ったところ、それほど混雑している施設はないというのが実感です。
施設の方に話を聞いてみても「掃除が不要なので参拝時間はそんなに長くない方がほとんど。そのため、そこまで混雑することはない」とのことでした。
ICカードがないと参拝できない?
従来のお墓であれば、墓地に出向けば血縁関係にない人でも気軽にお墓参りができます。しかし、自動搬送式納骨堂の場合はICカードで遺骨を呼び出すシステムなので、基本的にはICカードを持っていなければお参りはできないことになっています。
しかし実際には、ICカードがなくても、受付で契約者の名前などを言えばお参りができるようになっている施設が多いです。
契約者がICカードを忘れた場合や、友人などICカードを持っていない人が気軽にお参りできるようにという配慮から、こうした対応をしていると説明を受けました。
自動搬送式納骨堂を手がけているメーカー
自動搬送式納骨堂は、物流システム倉庫で利用されている立体自動倉庫の技術が流用されており、物流機器メーカーなどが開発しています。
自動搬送式納骨堂を手がけているメーカーの例
トヨタL&F
L&Fとは、Logistics(ロジスティクス=物流)とForklift(フォークリフト)の頭文字で、「トヨタL&F」は、物流システムとフォークリフトをはじめとするトヨタの産業車両の日本ブランドです。
ダイフク
1996年に、立体自動倉庫の技術を活用した国内初の搬送式納骨堂を納入。以来、都市型・屋外小型・葬儀会館併設型・居抜き対応型など様々なタイプを開発し、全国に30ヶ所以上納入してまいりました。(会社HP)
村田機械
物流システムのトップサプライヤーとしてのノウハウを活かし、都市近郊の土地や敷地を有効活用し多くの参拝客に対応できる、安全・安心の参拝システムをトータルで提供・サポートいたします。(会社HP)
光洋自動機
自動搬送式納骨壇を世に送り出してから20年の経験を持つ業界のパイオニアです。
民間の寺院様のみならず、施工条件の厳しい自治体の工事や皇室の菩提寺の別院など、数々の実績を積み重ねてまいりました。(日野こもれび納骨堂:全国の自治体で初となる大型の自動搬送式納骨堂)
500区画規模の小型のものから 7000区画規模の大型の物件まで、幅広い施工実績で皆様の多様なご要望にお応えしてまいります。(会社HP)
IHI物流産業システム
総合物流メーカーとして培った物流システムのノウハウを基本に、ハード技術、ソフト技術を有機的に結合し設計、ロジスティクス・物流のローコスト化・高い信頼性を追求。多彩な技術資源を背景に「最適化」のロジスティクスソリューションをご提案いたします。(会社HP)
機械の安全性について聞いてみた
大切な遺骨なので慎重に扱ってもらいたいというのが家族の想いです。遺骨が入った厨子をクレーンで運ぶため、厨子の移動中に振動でお骨が崩れてしまうことはないのか、地震対策はどうなっているのかなど、見学時に聞いてみるようにしています。
骨壷のような小型で重いものでも、極力静かに運べるように駆動部に工夫を凝らして作られており、通常の荷物を搬送するシステムよりもスピードを遅くしているそうです。また、地震などの揺れによって建物が壊れてしまったり、骨壷が落下して破損しないように設計施工されているとのことです。建物の施工会社がどこなのか、見学時に確認しています。
まとめ
納骨堂の中でも、自動搬送式は設備が充実しており、気軽にお参りできるのがいいと感じています。その一方、機械式ならではのデメリットがあることも否めません。選ぶ際は、不安をしっかり解消できるまで検討するようにしたいものです。