老後に向けた資産形成の方法として注目されている個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)。
iDeCoで節税できると聞いたことはあっても、いったいどんな仕組みなのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、iDeCoでなぜ節税できるのか、一般的な投資と比べてどんな税制メリットがあるのか、などについて解説します。
節税の仕組みについて知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
iDeCoは3段階に分けられる
iDeCoは、3つの段階(フェーズ)に分けて考えるとわかりやすいです。
iDeCoは老後資金を貯めるための積み立て制度
iDeCoは、毎月一定金額を積み立てて(掛金の拠出といいます)、自分で金融商品を選んで掛金を運用し、60歳以降にお金を受け取ることができる制度です。
自分で積み立て貯金をし、そのお金で資産運用をしながら老後資金を作るという仕組みです。
フェーズ1:毎月掛金を積み立てる
証券会社や銀行など、iDeCoを取り扱っている金融機関で加入申し込みをし、毎月一定額を積み立てます。これを「掛金の拠出」といいます。毎月ではなく年払いもできます。
iDeCoの掛金の拠出はいつでも休止・再開できるため、無理のない範囲でお金を積み立てられます。
フェーズ2:積み立てた掛金を運用する
積み立てた掛金を、株式や投資信託などの金融商品で運用します。
様々な金融機関がiDeCoを取り扱っています。金融機関ごとに、取り扱う運用商品、加入時や毎月の口座管理手数料などが異なるので、加入の際はよく比較しましょう。
iDeCoを取り扱っている金融機関を「運営管理機関」といいます。
フェーズ3:60歳以降にお金を受け取る
「積み立てた掛金」と「運用して得られたお金(利益)」の合計額を、60歳から75歳までの間に「一括」または「分割」して受け取ることができます。
ただし、加入から10年を経過していない場合は、受け取り開始年齢が61歳以降になります。
iDeCoの節税効果(税制メリット)は3つ
iDeCoは、3つのフェーズごとにそれぞれ税制メリットがあります。
- 「掛金を積み立てたとき」
- 「運用したお金が増えたとき」
- 「60歳以降にお金を受け取るとき」
老後資金を形成しながら同時に節税もできるのが大きな特徴です。以下、フェーズごとに説明します。
掛金を所得から全額差し引ける
iDeCoの掛金は全額が「所得控除」となります。
所得控除ってなに?
所得控除というのは、1年間の所得(会社員なら給与や賞与、フリーランスなら事業で得られた儲け)から差し引くことができる経費のようなものです。
所得税や住民税は所得金額に応じて計算されます。所得金額が多いほど所得税や住民税は高くなるため、所得からマイナスできる額が多ければ、その分税金が安くなります。
どれだけ運用益が出ても、税金は一切かからない
通常は株式投資や投資信託などの運用で得た利益には20%(復興特別所得税を除く)の税金がかかります。ところが、iDeCoで運用した場合には運用益が全額非課税(税金がかからない)になります。
運用益は、掛金分と合わせて60歳以降に受け取ります。
本来は税金として引かれるはずの運用益も再投資できるので、通常の投資よりもお金を増やしやすくなります。
積み立てたお金を受け取るときも、一定額まで税金はかからない
iDeCoで積立・運用したお金は、原則60歳から「老齢給付金」として受け取ることができます。受け取り時にも税制の優遇があります。
受け取り方法は「一括受取(一時金形式)」「分割受取(年金形式)」「一時金と年金の併用」の3つから選択できます。どの受け取り方法を選んでも一定額までは税金がかかりません。
一時金の場合は退職所得控除、年金の場合は公的年金等控除が適用されます。
退職所得控除と公的年金等控除について、詳しくは別記事にまとめます(準備中です)。
iDeCoの留意点
節税効果の高いiDeCoですが、気をつけなければならない点もいくつかあります。
元本割れリスクや手数料に注意
- 運用成績次第では掛金の拠出額を割り込む「元本割れ」のリスクがあります。
- 原則として60歳以降にならないとお金を受け取ることができません。
- 運用益に対する税金はかかりませんが、加入から受取開始までの期間中ずっと所定の手数料がかかります。
- 運用商品として投資信託を選んだ場合は、別途信託報酬が発生します。
- フリーランスなら確定申告、会社員なら年末調整で、所得控除の申請を毎年する必要があります。
まとめ
積立時・運用時・受取時の3つのフェーズで税制優遇を受けられるのはiDeCoだけです。
とはいえ、月々の掛金を高く設定して、生活が苦しくなっては本末転倒です。iDeCoは、手続きをすればいつでも掛金の拠出を休止・再開できるので、無理のない範囲でiDeCoを活用して老後に備えましょう。