フリーランスにおすすめの資産運用方法は? iDeCo・NISA・小規模企業共済を比較

資産運用・税金

厚生年金や企業年金のある会社員と違って、個人事業主(フリーランス)の公的年金は国民年金のみ。国民年金に40年加入したとしても、65歳から受け取れる年金はひと月あたり65,000円です。それに、フリーランスには雇用保険や休業補償もありません。これでは、老後やいざというときのお金の心配がつきまといますよね。

この記事では、フリーランスがぜひ活用したい資産運用方法を説明します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は、老後の資産形成に備える制度です。どのような特徴があるのか確認していきましょう。

iDeCoの概要

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度です。公的年金(国民年金や会社員の厚生年金)ではないので、加入は義務ではありません。

自分が拠出した掛金を自分で運用し、老後資金を形成します。拠出した掛金とその運用益の合計額を、原則として60歳以降に年金として受け取ることができるしくみになっています。

掛金の運用先を自分で選んで投資信託や預金などの商品で運用するため、将来受け取れる金額は運用成績によって変動します。

節税効果が高い

iDeCoは、掛金、運用益、そして年金を受け取るときに税制上の優遇措置が講じられており、節税効果が高いのが特長です。

毎月の掛金を全額所得控除できる

iDeCoの掛金はその全額を「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できます。所得控除とは、納税者の個人的な経済事情を、税金の計算に反映させるしくみです。税金の計算上、収入から差し引くことができるので、所得税と住民税を減らす効果があります。

iDeCoは職業などによって1年間に掛けられる金額が異なります。個人事業主なら(国民年金基金の掛金との合算で)年間816,000円まで拠出が可能です。

運用益に税金がかからない

通常、投資信託などを運用して得た収益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoで運用した収益には、税金がかかりません。

年金を受け取るときにも税制優遇がある

拠出した掛金とその運用益の合計額を60歳以降に受け取る際に、分割して「年金」として受け取るか、一括で「一時金」として受け取るかを選択できます。どちらの受け取り方法を選んでも一定の金額を所得控除できるので、税金の負担が軽くなります。

60歳になるまでお金を引き出せない

iDeCoは、原則として60歳になるまでお金を引き出せません。まとまったお金が必要になったときに自由に利用できないので注意が必要です。とはいえ、自由に引き出せないからこそ、老後の資産形成に適しているともいえます。

NISAとつみたてNISA

NISAは「少額投資非課税制度」といい、個人投資家の投資を後押しする税制優遇制度です。

NISAには3種類ある

NISAには以下の3種類があります。
・NISA
・つみたてNISA
・ジュニアNISA

ジュニアNISAは0歳から19歳までを対象とした制度なので、ここでは割愛します。

NISAとつみたてNISAは、日本に在住する20歳以上であれば誰でも利用することができます。ただし、併用はできないため、どちらかひとつを選択しなければいけません。なお、1年ごとに変更することは可能です。

NISAとつみたてNISAのどちらも、投資をすることで得られる利益(売却益や分配金など)に対して税金がかかりません。

NISAとつみたてNISAの違い

NISAとつみたてNISAには異なる点もいくつかあります。

投資対象が異なる

NISAでは、投資信託のほか、上場株式などにも投資できますが、つみたてNISAは、金融庁が定めた「長期の積立に適した低コストのもの」という基準をクリアした投資信託にしか投資できません。

非課税となる金額・対象期間が異なる

NISAは年間120万円までで最長5年、つみたてNISAは年間40万円までで最長20年です。

投資商品の購入方法が異なる

つみたてNISAはその名の通り毎月コツコツと積み立てて購入します。一方、NISAは積み立て購入のほか、一括購入も可能です。

つみたてNISAは少額からの積み立てになっており、長期的かつ分散的に投資を支援するための制度です。投資初心者なら、つみたてNISAのほうが安心して利用しやすいといえます。

iDeCoとNISA・つみたてNISAの比較

続いて、iDeCoとNISA・つみたてNISAそれぞれの違いについて確認してみましょう。

iDeCoとNISA・つみたてNISAの共通点

この3つに共通するのは「運用益が非課税」であるということ。株式や投資信託などを保有している間に得た配当金や、売却して得た利益には、通常の投資には20.315%(復興特別所得税含む)の税金がかかります。ところが、iDeCoとつみたてNISA、NISAは税金がかかりません。

iDeCoとNISA・つみたてNISAの相違点

続いて、iDeCoとNISA、つみたてNISAの違いについてです。主な違いは4つあります。

毎月の積立金に対する税制優遇

iDeCoは、毎月の掛金(積立金)の全額を所得控除として収入から差し引くことができるので、その分、所得税と住民税の負担が少なくなります。NISAとつみたてNISAにはこの優遇がないので、この点がiDeCoの大きなメリットといえます。

1年間に積み立てできる上限額

年間の積立額に違いがあります。iDeCoは職業や勤務先が導入している企業年金などによって、144,000円から816,000円の幅があります(フリーランスは816,000円)。NISAは職業などに関係なく誰でも120万円、つみたてNISAは40万円です。

積み立てができる期間

iDeCoは60歳になるまで(2022年5月からは65歳になるまで)。一方、NISAとつみたてNISAには制度としての期限が定められています。(今後、制度改正があれば期限が延長される可能性もありますが、現状では)NISAは2023年まで、つみたてNISAは2037年までの時限制度です。

途中引き出しができるか否か

iDeCoは原則として60歳になるまで積み立てた掛金や運用益を引き出すことはできません。60歳以降に全額を一時金で引き出すか、分割して年金で受け取ります。どちらの場合も、引き出した額に対して税金がかかりますが、それを軽減するしくみがあります。NISAとつみたてNISAはいつでも引き出すことができます。

小規模企業共済

小規模企業共済は、個人事業主などしか加入できない、iDeCoやNISAとは異なる性質をもった制度です。

個人事業主のための退職金制度

小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主(フリーランス)のための、積み立てによる退職金制度です。退職時や廃業時に、それまで積み立てた共済金を受け取ることができます。

税制メリットは2つ

掛金は全額所得控除できる

月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定できます。掛金の全額を「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できるため、高い節税効果があります。

共済金を受け取るときにも税制優遇がある

共済金を受け取りは、分割して「年金」として受け取るか、一括で「一時金」として受け取るか、または「年金と一時金を併用」するかを選択できます。どの受け取り方法を選んでも一定の金額を所得控除できるので、税金の負担が軽くなります。

低金利の貸付制度を利用できる

これまで紹介した制度との一番の違いは、小規模企業共済貸付制度があるという点です。
掛金の納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で、事業資金等を借り入れることができます。低金利で、即日貸付けも可能なので、急遽まとまった資金が必要になっても安心です。

結局、どれがいいのか?

結局どれを選べばいいのかはケースバイケースで、唯一の正解はありません。以下の基準を参考に、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。

運用の自由度

運用益がすべて非課税になるという点では、NISAとつみたてNISA、iDeCoのいずれもあてはまります。

iDeCoは原則として60歳まで、拠出したお金を引き出すことができないため、現役時代にお金が必要になるようなケースが想定される人には不向きです。
一方、NISAとつみたてNISAはいつでも引き出せるため、運用の自由度が高いといえます。

小規模企業共済はそもそも運用という概念はありません。

節税効果

節税に有利という点では、掛金が全額所得控除になるiDeCoと小規模企業共済になります。NISAとつみたてNISAは運用益が非課税になりますが、控除はできません。
節税に特化して利用したい場合はiDeCoまたは小規模企業共済を利用しましょう。

いざというときの資金調達

事業資金等を借り入れることができるのは、小規模企業共済です。掛金の納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で、低金利で即日借入できるのが特徴です。

NISAとつみたてNISAは、自分が掛けたお金をいつでも引き出すことが可能です。一方、iDeCoは原則として60歳まで、拠出したお金を引き出すことはできません。

まとめ

ひとくちに資産運用といってもいろいろな種類があり、それぞれ特徴も異なります。
節税対策したい、お金を増やしたい、いざというときに低金利で借入できる安心感が欲しい、など、自分の目的に合わせて取り入れてみましょう。

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