iDeCoと小規模企業共済って、節税効果があるらしいけど、どっちがいいんだろう?
併用はできるのかな?
そんな疑問を抱えているフリーランスの方に向けた記事です。
iDeCoと小規模企業共済の概要
まず初めに、iDeCo(イデコ)と小規模企業共済の概要について解説します。
iDeCo(イデコ)とは
私的個人年金と呼ばれ、公的年金にプラスして将来の年金額を増やすための制度です。
加入条件は、日本在住の20歳~60歳(2022年5月からは、一定の条件を満たした人は60歳以上でも加入できます)。
自分で決めた金額を毎月積み立てて、定期預金や投資信託、保険などの金融商品を自分で運用します。積み立てたお金(掛金)は全額所得控除でき、運用して得られた利益には税金がかかりません。また、将来、年金として受け取るときにも税制上の優遇があるため、節税効果が見込めます。
年金の受取期間は5~20年から選べます。一括受取もできます。
小規模企業共済とは
フリーランス(個人事業主)や小規模会社の経営者が、廃業や退職時の生活資金などを積み立てるための制度です。
自分で掛金を決めて、毎月積み立て続けることで、将来、事業を廃業したときや引退したときなどに「共済金(または解約手当金)」を受け取ることができます。共済金は、一括受取・分割受取どちらにも対応しており、併用もできます(例外あり)。
iDeCoと同様に、掛金は全額所得控除できます。
また、小規模企業共済は掛金の納付金額に応じて貸付制度を利用できるのも大きな特徴です。退職資金の準備をしながら、緊急で資金が必要になったときに事業資金の借入れができるのは、フリーランスにとって安心材料のひとつといえるでしょう。
なお、廃業や退職などではない理由により20年未満で解約すると元本割れしてしまう点には注意が必要です。
どちらも節税効果あり
iDeCoと小規模企業共済の掛金は、どちらも全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)できます。
所得控除とは、個人ごとに異なる申告者の事情を、所得税の計算に反映する制度です。「扶養している家族がいるか」「扶養している家族にも収入があるか」「医療費をたくさん支払ったか」などの事情を考慮して所得税額を算出します。所得控除の額が多いほど、税金は安くなります。
フリーランスなら、iDeCoは(国民年金基金の掛金との合算で)年間816,000円まで、小規模企業共済は年間840,000円まで掛けられます。掛金は全額所得控除できるので、節税効果が高いのです。
ただし、収入が少ない人は、そもそも支払うべき所得税の金額も少ないため、大きな節税効果は見込めません。また、住宅ローン控除を活用しているので所得税を納めていない(あるいはほとんど納めていない)人も、住宅ローン控除が終わるまではメリットが薄いので注意が必要です。
iDeCoと小規模企業共済それぞれの留意点
iDeCo
中途解約(脱退)はできない
iDeCoで積み立てたお金は、原則として60歳まで引き出せません。簡単に引き出せないからこそ老後の準備に適しているといえるのですが、最低限必要な生活資金が少ない場合は、iDeCoよりもまず貯金を優先しましょう。
また、教育費やマイホームの購入など、60歳未満で起こりうるライフイベントのお金の備えができていない場合は、引き出しが容易にできる金融商品の利用を検討すべきです。
元本割れのリスクがある
iDeCoで扱う商品には、定期預金、保険商品、投資信託があります。
定期預金と保険は元本確保型の商品です。一方、投資信託は運用がうまくいけば元本確保型より高い収益を得ることができますが、運用がうまくいかないと元本割れになってしまうことがあります。
50代からの積み立て開始は要注意
iDeCoへの拠出(積み立て)は、現状では60歳までとなっています(2022年5月からは、一定の要件を満たした人は65歳未満に引き上げられる予定)。
iDeCoは、10年以上の加入期間があれば60歳から給付金を受け取ることができます。裏を返すと、通算の加入期間が10年に満たない(=50歳以上で加入した)場合は、受け取れる年齢が引き上がるということです。
たとえば、拠出期間が「6年以上8年未満」の場合は62歳から、「2年以上4年未満」なら64歳から受け取りが可能です。
ここで気をつけたいポイントは、iDeCoは拠出終了後も毎年口座管理料が必要だという点です。年間の運用益が少ない場合、収益率が悪化するリスクがあります。
小規模企業共済
資産運用の知識は不要
資産運用は、うまくいけば効率的に資産を増やすことができますが、元本割れのリスクも伴います。
小規模企業共済は、毎月の掛金をいくらにするか決めたら、あとはひたすら積み立て続けるだけ(途中、掛金の増減も可能です)。資産運用に頭を悩ませる必要がありません。
手続きは窓口か郵送のみ
小規模企業共済の手続きは、そのほとんどが窓口か郵送でしかできず、インターネットに対応していないのがネックです。
加入の申し込みや掛金・登録情報の変更などの手続きなどは、郵送または小規模企業共済を取り扱う代理店窓口(各種銀行や商工会議所など)でしかできません。
窓口や郵送の手続きはインターネットよりも時間や手間がかかります。掛金の変更や登録情報の変更などは、加入期間中に何度も行うかもしれないので不便だといえます。
iDeCo | 小規模企業共済 | |
運営元 | 国民年金基金連合会 | 中小機構 |
制度の目的 | 老後の資産形成(国民年金に加算) | 廃業時や退職時の一時金積み立て |
手続きの窓口 | 運用管理機関(銀行や証券会社など) | 代理店(銀行や商工会議所など) |
インターネットでの手続き | できる(金融機関による) | できない |
掛金の額 | (フリーランスの場合) 月額:5,000円~68,000円 年額:816,000円まで | 月額:1,000円~70,000円 年額:840,000円まで |
掛金の変更 | いつでも可能 | いつでも可能 |
掛金の税制優遇 | 全額、所得控除(小規模企業共済等掛金控除) | 全額、所得控除(小規模企業共済等掛金控除) |
元本割れの可能性 | あり(元本保証の金融商品もある) | 20年以上積み立てればなし |
運用商品の選択 | 定期預金や投資信託、保険などの金融商品の中から選択 | なし |
手数料 | 口座開設:数千円程度 維持・管理:数百円程度(金融機関により異なる) | なし |
給付金の受取タイミング | 60~75歳(加入期間により異なる) | 廃業または解約したとき |
給付金の受取方法 | 年金または一時金(併用も可) | 年金または一時金(併用も可) *解約手当金は一時金のみ |
給付金の受取時の課税 | される | される |
解約 | 原則としてできない | できる |
貸付制度 | なし | あり |
結局、どっちがいいの?
iDeCoが向いている人
iDeCoは資産運用する商品が選べるため、小規模企業共済に比べると多少のリスクはあります。また、運用の手間や手数料もかかります。しかし、リスクがある一方で、市況によっては将来的なリターンも見込めます。
多少のリスクを許容でき、利便性を求める人にはiDeCoがおすすめといえるでしょう。
小規模企業共済が向いている人
小規模企業共済は、元本割れのリスクが少なく、手間がかからないというメリットがあります。
リスクを避けたい人や資産運用の手間をかけたくない人には小規模企業共済がおすすめです。
まとめ
結局、どちらを選ぶのがいいのかの一番のポイントは「(資産が減少するかもしれないという)リスクを許容できるかどうか」といえるでしょう。
iDeCoと小規模企業共済は併用も可能なので、さまざまな活用方法が考えられます。
- 両方とも少額から始めてみる
- まずはどちらかから始めてみて、収入に余裕が出てきたら追加する
- どちらか一方の掛金上限に達したら、もう一方を追加する
など、ご自身の状況に合わせて検討してみてください。