小規模企業共済は、個人事業主(フリーランス)が事業をやめたり、小規模企業の経営者が法人を解散したりしたときなどに、それまで払ってきた掛金の額に応じてまとまったお金が払い戻される共済制度です。
昭和40年に発足した制度で、国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構によって運営されています。
フリーランスや小規模企業の社長にとって退職金のような役割を果たすといわれています。
小規模企業共済って、いつ、どんな状態になったらお金を受け取れるの?
掛金に対していくらぐらいもらえるんだろう?
小規模企業共済は、同じ金額の掛金を払っていたとしても、請求理由によって将来受け取れる金額が異なるんです。
小規模企業共済制度では請求理由のことを「共済事由」としているため、以下「共済事由」と記載します。
この記事では、どんなときに、いくら共済金を受け取れるのか、共済事由別の具体例も交えて解説します。
共済金等が受け取れるのは、いつ?どんなとき?
小規模企業共済の共済金は、個人事業主が廃業したときや法人を解散したときに受け取ることができます。満期や満額というしくみはありません。
共済金等の種類
将来受け取れる金額は、共済事由によって次の4つに分類されます。
- 共済金A
- 共済金B
- 準共済金
- 解約手当金
将来もらえる金額はどうやって決まる?
将来もらえる金額はどのように算定されるのか、確認していきましょう。共済金(共済金A・共済金B・準共済金)と解約手当金では計算方法が異なります。
共済金の場合
共済金は、基本共済金と付加共済金を合計した金額です。
- 基本共済金は
- 月額の掛金と掛金を納付した月数に応じて決まります。金額は、共済事由ごとに法令で定められています。
- 付加共済金は
- 運用益などに応じて毎年変動する支給率をもとに計算されます。
- 参考:最近の支給率
- 平成30年度 0.036%
- 令和3年度 0.328%
- 令和4年度 0.504%
- 参考:最近の支給率
- 運用益などに応じて毎年変動する支給率をもとに計算されます。
解約手当金の場合
掛金を納付した月数に応じて、掛金合計額の80%〜120%相当額が受け取れます。掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満で解約する場合は元本割れします。解約手当金には付加共済金はありません。
具体例:いくらもらえるか共済事由別に比較
同じ額の掛金を納付していても、共済事由によって、将来受け取れる金額は異なります。
掛金を毎月1万円ずつ納付した場合に、請求事由によっていくらもらえるのかを掛金納付年数別に一覧でまとめました。
掛金【月額1万円】でもらえる共済金等
「共済金A」または「共済金B」では、12ヶ月以上掛金を納付していれば掛金以上のお金を受け取ることができます。一方、「準共済金」「解約手当金」は、納付月数によっては元本割れしてしまいます。
共済金の受け取りは、一括か分割かを選べる
共済金の受け取り方法は「一括」「分割(10年または15年)」「一括と分割の併用」のいずれかを選択できます。
分割受け取りする場合の留意点
「一括受取」はすべての共済事由(共済金A・共済金B・準共済金・解約手当金)で選択可能です。
一方、「分割受取」または「一括受取と分割受取の併用」を選択できるのは、「共済金A」または「共済金B」のみです(「準共済金」「解約手当金」では分割受け取りはできません)。
また、「共済金A」または「共済金B」であっても、「分割受取」ではさらにいくつかの要件を満たす必要があります。
一括受取を選択すると「退職所得」扱いになり、分割受取を選択すると「雑所得」扱いになります。「事業所得」などと比べて税負担は大幅に軽減されます。
小規模企業共済の掛金
続いて、掛金の額について説明します。
掛金の額
掛金月額は1,000円から7万円までの範囲(500円単位)で自由に設定できます(半年払や年払もできます)。
なお、掛金は途中で増額または減額できますが、減額する場合は事業経営の著しい悪化など一定の要件が必要です。また、減額するとデメリットもあるので注意しましょう。
掛金は全額所得控除扱いとなるため、節税メリットがあります。
掛金の納付は口座振替のみ
加入者本人の預金口座からの振替で行います。屋号や会社名、通称、旧姓などの口座を指定することはできません。
振替日は毎月18日(18日が休日の場合は翌営業日)です。
まとめ
小規模企業共済は、フリーランスや法人の役員の退職金として活用できます。ただし、共済事由によって将来受け取れる金額が異なる点には注意しましょう。